バージョン 2.1 で追加.
weakref モジュールは、Pythonプログラマがオブジェクトへの 弱参照(weak refarence) を作成できるようにします。
以下では、用語 リファレント (referent) は弱参照が参照するオブジェクトを意味します。
オブジェクトに対する弱参照は、そのオブジェクトを生かしておくのに十分な条件にはなりません: あるリファレントに対する参照が弱参照しか 残っていない場合、ガベージコレクション(garbage collection)機構は自由にリファレントを破壊し、そのメモリを別の用途に再利用できます。弱参照の主な用途は、 巨大なオブジェクトを保持するキャッシュやマップ型の実装において、キャッシュやマップ型にあるという理由だけオブジェクトを存続させたくない場合です。
例えば、巨大なバイナリ画像のオブジェクトがたくさんあり、それぞれに名前を関連付けたいとします。 Python の辞書型を使って 名前を画像に対応付けたり画像を名前に対応付けたりすると、画像オブジェクトは辞書内のキーや値に使われているため存続しつづける ことになります。 weakref モジュールが提供している WeakKeyDictionary や WeakValueDictionary クラスはその代用で、対応付けを構築するのに弱参照を使い、キャッシュや マップ型に存在するという理由だけでオブジェクトを存続させないようにします。例えば、もしある画像オブジェクトが WeakValueDictionary の値になっていた場合、最後に残った画像オブジェクトへの参照を 弱参照マップ型が保持していれば、ガーベジコレクションはこのオブジェクトを再利用でき、画像オブジェクトに対する弱参照内の対応付けはそのまま削除されます。
WeakKeyDictionary や WeakValueDictionary は 弱参照を使って実装されていて、キーや値がガーベジコレクションによって回収されたことを弱参照辞書に知らせるような弱参照オブジェクトのコールバック関数を 設定しています。 ほとんどのプログラムが、いずれかの弱参照辞書型を使うだけで必要を満たせるはずです — 自作の弱参照辞書を直接作成する必要は普通はありません。とはいえ、 弱参照辞書の実装に使われている低水準の機構は、高度な利用を行う際に恩恵をうけられるよう weakref モジュールで公開されています。
ノート
オブジェクトへの弱参照は、そのオブジェクトの __del__() メソッドが呼び出される前にクリアされます。弱参照のコールバック呼ばれるときに、そのオブジェクトがまだ生存しているためです。
すべてのオブジェクトを弱参照できるわけではありません。弱参照できるオブジェクトは、クラスインスタンス、(Cではなく) Pythonで書かれた関数、 (束縛および非束縛の両方の)メソッド、 set および frozenset 型、ファイルオブジェクト、ジェネレータ(generator)、型オブジェクト、 bsddb モジュールの DBcursor 型、ソケット型、 array 型、 deque 型、および正規表現パターンオブジェクトです。
バージョン 2.4 で変更: ファイル、ソケット、 array 、および正規表現パターンのサポートを追加しました.
list や dict など、いくつかの組み込み型は弱参照を 直接サポートしませんが、以下のようにサブクラス化を行えばサポートを追加できます:
class Dict(dict):
pass
obj = Dict(red=1, green=2, blue=3) # このオブジェクトは弱参照可能
拡張型は、簡単に弱参照をサポートできます。詳細については、 弱参照(Weak Reference)のサポート を参照してください。
object への弱参照を返します。リファレントがまだ生きているならば、元のオブジェクトは参照オブジェクトの呼び出しで取り出せす。 リファレントがもはや生きていないならば、参照オブジェクトを呼び出したときに None を返します。 callback に None 以外の値を与えた場合、オブジェクトをまさに後始末処理しようとするときに 呼び出します。このとき弱参照オブジェクトは callback の唯一のパラメタとして渡されます。リファレントはもはや利用できません。
同じオブジェクトに対してたくさんの弱参照を作れます。それぞれの弱参照に対して登録されたコールバックは、 もっとも新しく登録されたコールバックからもっとも古いものへと呼び出されます。
コールバックが発生させた例外は標準エラー出力に書き込まれますが、伝播されません。 それらはオブジェクトの __del__() メソッドが発生させる例外とまったく同様の方法で処理されます。
object がハッシュ可能(hashable)ならば、弱参照はハッシュ可能です。それらは object が 削除された後でもそれらのハッシュ値を保持します。 object が削除されてから初めて hash() が呼び出された場合に、その呼び出しは TypeError を発生させます。
弱参照は等価性のテストをサポートしていますが、順序をサポートしていません。参照がまだ生きているならば、 callback に関係なく二つの参照はそれらの リファレントと同じ等価関係を持ちます。リファレントのどちらか一方が削除された場合、参照オブジェクトが同じオブジェクトである場合に限り、その参照は等価です。
バージョン 2.4 で変更: 以前はファクトリでしたが、サブクラス化可能な型になりました。 object 型から導出されています.
弱参照を使う object へのプロキシを返します。弱参照オブジェクトとともに用いられる明示的な参照外しを要求する代わりに、これはほとんどのコンテキストに おけるプロキシの利用をサポートします。 object が呼び出し可能かどうかに依存して、 返されるオブジェクトは ProxyType または CallableProxyType のどちらか一方の 型を持ちます。プロキシオブジェクトはリファレントに関係なくハッシュ可能(hashable)ではありません。 これによって、それらの基本的な変更可能という性質による多くの問題を避けています。 そして、辞書のキーとしての利用を妨げます。 callback は ref() 関数の同じ名前のパラメータと同じものです。
object を参照する弱参照とプロキシの数を返します。
object を参照するすべての弱参照とプロキシオブジェクトのリストを返します。
キーを弱く参照するマッピングクラス。もはやキーへの強い参照がなくなったときに、辞書のエントリは捨てられます。アプリケーションの他の部分が所有するオブジェクトへ 属性を追加することもなく、それらのオブジェクトに追加データを関連づけるためにこれを使うことができます。これは属性へのアクセスをオーバーライドするオブジェクトに 特に便利です。
ノート
注意: WeakKeyDictionary は Python 辞書型の上に作られているので、 反復処理を行うときにはサイズ変更してはなりません。 WeakKeyDictionary の場合、反復処理の最中にプログラムが行った操作が、(ガベージコレクションの副作用として) 「魔法のように」辞書内の要素を消し去ってしまうため、確実なサイズ変更は困難なのです。
WeakKeyDictionary オブジェクトは、以下のメソッドを持ちます。 これらのメソッドは、内部の参照を直接公開します。 その参照は、利用される時に生存しているとは限りません。 なので、参照を利用する前に、その参照をチェックする必要があります。 これにより、必要なくなったキーの参照が残っているために、ガベージコレクタがそのキーを削除できなくなる事態を避ける事ができます。
キーへの弱参照のリストを返します。
バージョン 2.5 で追加.
値を弱く参照するマッピングクラス。値への強い参照がもはや存在しなくなったときに、辞書のエントリは捨てられます。
ノート
注意: WeakValueDictionary は Python 辞書型の上に作られているので、 反復処理を行うときにはサイズ変更してはなりません。 WeakKeyDictionary の場合、反復処理の最中にプログラムが行った操作が、(ガベージコレクションの副作用として) 「魔法のように」辞書内の要素を消し去ってしまうため、確実なサイズ変更は困難なのです。
WeakValueDictionary オブジェクトは、以下のメソッドを持ちます。 これらのメソッドは、 WeakKeyDictionary クラスの iterkeyrefs() と keyrefs() メソッドと同じ問題を持っています。
値への弱い参照のリストを返します。
バージョン 2.5 で追加.
弱参照オブジェクトのための型オブジェクト。
呼び出し可能でないオブジェクトのプロキシのための型オブジェクト。
呼び出し可能なオブジェクトのプロキシのための型オブジェクト。
プロキシのためのすべての型オブジェクトを含むシーケンス。これは両方のプロキシ型の名前付けに依存しないで、オブジェクトがプロキシかどうかのテストをより簡単にできます。
プロキシオブジェクトが使われても、元のオブジェクトがガーベジコレクションされてしまっているときに発生する例外。これは標準の ReferenceError 例外と同じです。
参考
弱参照オブジェクトは属性あるいはメソッドを持ちません。しかし、リファレントがまだ存在するならば、呼び出すことでそのリファレントを取得できるようにします:
>>> import weakref
>>> class Object:
... pass
...
>>> o = Object()
>>> r = weakref.ref(o)
>>> o2 = r()
>>> o is o2
True
リファレントがもはや存在しないならば、参照オブジェクトの呼び出しは None を返します:
>>> del o, o2
>>> print r()
None
弱参照オブジェクトがまだ生きているかどうかのテストは、式 ref() is not None を用いて行われます。通常、参照オブジェクトを使う必要があるアプリケーションコードはこのパターンに従います:
# rは弱参照オブジェクト
o = r()
if o is None:
# リファレントがガーベジコレクトされた
print "Object has been allocated; can't frobnicate."
else:
print "Object is still live!"
o.do_something_useful()
“生存性(liveness)”のテストを分割すると、スレッド化されたアプリケーションにおいて競合状態を作り出します。 (訳注:if r() is not None: r().do_something() では、2度目のr()がNoneを返す可能性があります) 弱参照が呼び出される前に、他のスレッドは弱参照が無効になる原因となり得ます。 上で示したイディオムは、シングルスレッドのアプリケーションと同じくマルチスレッド化されたアプリケーションにおいても安全です。
サブクラス化を行えば、 ref オブジェクトの特殊なバージョンを作成できます。これは WeakValueDictionary の実装で使われており、マップ内の各エントリによるメモリのオーバヘッドを減らしています。こうした実装は、ある参照に追加情報を関連付けたい場合に便利ですし、 リファレントを取り出すための呼び出し時に何らかの追加処理を行いたい場合にも使えます。
以下の例では、 ref のサブクラスを使って、あるオブジェクトに追加情報を保存し、リファレントがアクセスされたときにその値に作用 をできるようにするための方法を示しています:
import weakref
class ExtendedRef(weakref.ref):
def __init__(self, ob, callback=None, **annotations):
super(ExtendedRef, self).__init__(ob, callback)
self.__counter = 0
for k, v in annotations.iteritems():
setattr(self, k, v)
def __call__(self):
"""Return a pair containing the referent and the number of
times the reference has been called.
"""
ob = super(ExtendedRef, self).__call__()
if ob is not None:
self.__counter += 1
ob = (ob, self.__counter)
return ob
この簡単な例では、アプリケーションが以前に参照したオブジェクトを取り出すためにオブジェクトIDを利用する方法を示します。 オブジェクトに生きたままであることを強制することなく、オブジェクトのIDは他のデータ構造の中で使えます。 しかし、そうする場合は、オブジェクトはまだIDによって取り出せます。
import weakref
_id2obj_dict = weakref.WeakValueDictionary()
def remember(obj):
oid = id(obj)
_id2obj_dict[oid] = obj
return oid
def id2obj(oid):
return _id2obj_dict[oid]